特許調査とは 研究開発に応じた特許調査の種類と方法
特許調査とは
特許業務は、当然に対象となる技術・製品があり、その技術・製品の研究開発と連動しつつ、それに貢献するものでなければなりません。
今回は、特許業務の中でも、研究開発のいずれの段階でも必要不可欠である特許調査の概要について説明します。
研究開発と特許調査
1.研究開発の流れ
モノづくりの会社は、世のためになるモノをつくるための研究開発が最重要業務であることは言うまでもないですが、その「研究開発」とは何でしょうか。ざっくりいうと「世のためになりそうなモノを選んで、それを実際に使えるようにして世に出す」一連の流れのことです。
その流れを段階に分けるとすると、以下のようになります。
(1)企画:世に出そうとする「モノ」を選ぶ段階
⇒「お肉(ひき肉)」をもっと良くして、世の中の人に美味しさを提供しよう!
(2)研究:選んだ「モノ」の基本性能を良くする段階
⇒もっと美味しいお肉するために、味付けを工夫しよう!
(3)開発:良くした「モノ」をお客様が欲しい製品にする段階
⇒美味しくしたお肉を、お客様が食べる形(=製品)にしよう!
(4)生産(量産):製品を効率よくつくる段階
⇒製品を安くつくって、もっと稼ぐ+もっと安く売ろう!
この研究開発の段階それぞれに応じて、特許調査は必要となります。
・企画・研究段階
市場や技術の動向を調査することで、自分が研究しようとする「モノ」が新しいか確認したり、既に世の中に出ているモノから学んで自分の研究開発に取り込むこともできます。また、自分の敵(競合)が何をしているか把握することで、差別化できる点を見つけることができます。
・開発・生産段階
実際に研究した「モノ」を製品まで落とし込んで、世の中に出していく段階ですので、その製品が敵(を含む他社)の特許を侵害していないかを調査する必要があります。また、もし自分の製品と抵触する可能性のある特許が見つかった場合は、それを潰すための文献を調査します。
次項で詳しくみていきましょう。
2.特許調査の流れ(種類)
(1)市場・技術動向調査
企画・研究の段階で行う調査であり、自分と敵の特許(技術)の状況を確認するものです。
この段階では、まずは広い目(マクロ)で市場や技術の動向を調査することで、自分が考える「モノ」が世に出せそうか判断します。
また、敵の特許をみることで、敵の技術と差別化できているか確認したり、差別化する点を見つけたりします。
具体的に図の例で説明すると、自分が「砂糖で下味をつけた美味しいお肉」について研究したいと考えており、特許を調査したところ、敵は「胡椒で下味をつけたお肉」を検討しており、「砂糖」は無いことが分かりました。つまり、世の中には自分が考えるお肉は無さそうです。また、「砂糖」での味付けが敵よりも美味しければ差別化にもなるので、検討してみる価値はありそうです。
また、研究開発スタートした後も調査した文献等を読み込んで自分の研究や特許出願に活用したり、敵が同じことをやってないか確認します。
これらの調査は、新しい「モノ」を選んで良くしていくためのもので「攻めの調査」と呼んだりします。
(2)侵害予防(クリアランス)調査
開発・生産の段階で行う調査であり、自分が実際に世に出そうとする製品が敵の特許に該当していないか確認するものです。
敵の特許に該当する、つまり侵害していることになると、原則自分の製品が世に出せないということになります。
特許権には、その範囲において他人の実施を排除できる力があるためです。
よって、この段階では、狭い目(ミクロ)で、自分の製品と敵の特許とを慎重に比較して、権利範囲に入っていないか否かを判断します。
(仮に敵の特許発明の範囲に入っていたとしても、その敵の特許をつぶしたり、ライセンスをもらって実施する手はあります)
図の例でいうと、(1)動向調査でマクロに確認した内容と同じく、敵の特許とミクロに比較しても「砂糖で下味をつけたハンバーグ(製品)」はその範囲外であり、どうやら自分のお肉を使ったハンバーグを世に出せそうです。
逆に、敵の製品が自分の特許を侵害していないか否かも確認し、敵が侵害している場合は、敵の実施をやめさせたり、既に実施している分に対して損害賠償請求すること等の権利行使を検討します。
これらの調査は、自分の製品の実施ができるか、又はそれに似た敵の実施を防ぐためのもので「守りの調査」と呼んだりします。
さいごに
上記の通り、特許調査は研究開発をするにあたって必要不可欠なものです。
攻めの調査では、無駄なことをしないようにするだけでなく、既に世に出ているものを活用して、自分の研究開発を促進させる機能があります。
守りの調査では、お金や労力をかけて製品にしたものを安全に世に出すことができ、またその製品に似た敵の製品をつぶし得る機能があります。
それらの調査をするためのツールとして、近年では非常に優れたものがあり、複雑な技術でも比較的に短時間で調査できるようになっています。
そのような特許調査は、様々な技術に対して最新ツールを使って分析しつつ、関係部署に提示することで、研究開発のサイクルに関わっていける非常にやりがいがあり面白い仕事です。
次回以降は、市場・技術動向調査、侵害予防調査に分けて、その方法を含めて詳しく説明していきます。