独立開業に向けて② 事業環境の把握・提供価値の検討

前回は、1.事業目的の設定と2.自分自身の強みの把握を書きました。
https://blog.suepat.com/mission-and-resource/

今回は、3.事業環境の把握と4.提供価値の検討について記します。

事業環境を分析することで、お客様・競合・地理的条件等を把握し、その把握した環境に、前回検討した事業目的や自身の強みを合わせることで、誰に対して何を提供してどう喜んで頂くのか、つまり提供価値を考えました。

事業環境の把握

私が開業する予定地は、地元である愛媛県松山市です。
松山市だけだと狭すぎるように感じたので、愛媛県を対象地域としました。
また、私の専門は特許であるため、今回の調査対象は特許(実用新案含む)としました。

上記を踏まえ、愛媛県における特許出願の観点から、該地域におけるお客様(企業)及び活動している弁理士の状況を調査しました。

※今回の調査は主に特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)を用いました。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/

①愛媛県の企業における特許出願状況

本社住所が愛媛県である出願人によってなされた直近5年間の出願の推移を下記します。
若干の増減はありますが、概ね1200件/年の横ばいで推移しています(2023年は、~9/24まで)。

2023年:776件
2022年:1176件
2021年:1277件
2020年:1301件
2019年:1203件

また、上位の出願人、及び出願される技術分野で特に多いものは以下の通りです。
出願人は概ね大手企業であり、当然にその業務範囲とトップの技術分野とは相関がみられます。
これら大手企業による出願は70~80%を占めます。

<上位出願人>
・大王製紙
・ユニ・チャーム
・井関農機
・三浦工業

<トップの技術分野(FI)>
・包袋/被覆用品/吸収性パッド
・トイレットペーパー
・農業機器
・容器/包装体

※①の出願人は、あくまで愛媛県を本社としているだけですので、実際には愛媛県以外の支社でなされた出願もその数に含みます。

②愛媛県の弁理士による特許出願状況

まず、弁理士ナビで愛媛県の特許事務所を検索しました。
※弁理士ナビは、無料で全国の弁理士/特許事務所を検索できるプラットフォームです。
https://www.benrishi-navi.com/

愛媛県では16の弁理士所属の事務所が存在しています(支所や法律事務所含む)。
うち9が松山市の事務所であり、松山市に集中している傾向があります。

この16の事務所を調査対象として、上記と同様にJ-PlatPatで、代理人が所長弁理士or特許事務所名を含む特許出願の推移を調べました。

16の事務所のうち直近で出願をしているのは8の事務所であり、それら事務所の出願状況を下表に示しますが、愛媛県を拠点とする弁理士による出願数は50件弱/年です。(特に下表青字標記の3つの事務所の出願が多く、そのうち黄色セルの2つの事務所は松山市を本拠地とする事務所です。)

ここで、上述した通り①の愛媛県全体の出願数;1200件/年の70~80%は大企業によるものです。

大企業は、その研究開発の規模から大量に出願することが多い都合上、都市圏の大規模事務所に依頼することが一般的です。
したがって、それら大企業の出願代理は受けられないとしても、少なくとも20%は個人・中小企業による出願であり、その数は約240件/年あります。

ここで愛媛県による弁理士の出願は50件弱/年ですので、仮にそれらが全て愛媛県個人・中小企業の出願だとしても20%程度です。
それ以外は、愛媛県外の弁理士による出願(または本人出願)となります。
すなわち、地元である地理的な優位性を活かして、その残りの240件/年の出願に訴求できないか?という仮定ができます。

ここで、①の出願において出願数の比較的少ない技術分野をみてみると、例えば以下のような分野があります。
これらの分野に関する出願の多くは、愛媛の大企業の業態とは異なり、かつ愛媛県の弁理士によって出願されている分野とも異なるので、(あくまで仮定にすぎませんが)狙い目の分野といえるかもしれません。

  • 水,廃水または下水の処理
  • パルプまたは紙
  • 化粧品あるいは類似化粧品製剤
  • コーティング材料

<愛媛県の弁理士による特許出願状況>

③愛媛県の弁理士による活動

もう一つ、愛媛県の弁理士の方々が現状どのような取り組みをされているかも確認しておく必要があります。
この点は、弁理士会四国会のホームページを見てみました。
https://jpaa-shikoku.jp/

弁理士会四国会の活動として、以下の4つが掲げられています。

  1. 会員向け研修会の開催
  2. 知財授業・知財支援活動
  3. 常設知的財産相談室
  4. 対外連携

1と2から、主に講師としての活動要因としてのニーズがあるようです。
特に2は、小中学校、高校、大学への知財授業の講師派遣等の活動を行っているようです。

3では、主に個人・中小企業向けに無料相談を定期的に実施していたり、
4は、中小企業診断士、金融機関及び大学等との連携によって包括的な地域支援を行っているとのことです。

提供価値の検討

上述したお客様・競合※の情報と、自分の強みとを結びつけて、以下のような提供価値があるのではないか?と考えました。

同地域の弁理士は連携することも多いので、愛媛県の弁理士先生方々は、競合ではなくむしろ協業者というべきかもしれませんが。

以下に、自分が成し得ると考える提供価値を示しますが、もちろん仮定であり、実際に突進しながら試行錯誤を繰り返していきたいと考えています。
弁理士会への積極的な参画や貢献を通して、地元の知財を盛り上げられるよう、これから頑張っていく所存です。

(開業まで、あと5ヶ月…)

<自分が提供し得る価値の仮定>

  • 愛媛県における個人・中小企業の出願;潜在案件約200件/年への訴求
    ⇒・水処理、紙、コーティング等、自身の専門に近い分野であり、専門性を活かせる。
     ・これまでの経験から、社内運用制度へのアドバイス等含めた知財全体を通したサービスの提供ができる。
  • 人材基盤強化への貢献
    ⇒・企業や教育機関への講師活動について、企業内講師経験や鍛錬したプレゼン技能を活かした高品質なセミナーが提供できる。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA