愛媛県の産業について 簡単な特許調査

特許マップ(バブルチャート)

前回は愛媛県内の企業による特許出願について概要を示しました。
https://blog.suepat.com/environmental-analysis/

今回は、愛媛県の特許出願について特許マップを用いてもう少し具体的にみてみます。

特許マップは有料の商用ツールで作成/利用することが多いですが、特許庁の検索システム(https://www.j-platpat.inpit.go.jp/)と、エクセルを用いて作成することも可能です。今回はその手法をご紹介します。

1.愛媛県の産業 by非特許情報

特許調査の前に、愛媛県の産業についてネット情報から以下のようなことが分かります。
(参考:https://www.sugowaza-ehime.com/monodukuri.php

  • 第1次産業が1.6%、第2次産業が29.1%、第3次産業が68.9%(生産額ベース)
  • 出荷額等が多い業種;非鉄金属(18.5%)、パルプ紙(14.2%)、船舶等の輸送機械(9.9%)、化学(7.9%)

これら産業構造は、以下に示す企業からみても分かりやすいです。

<愛媛県を本社とする大企業例>

  • 紙・パルプなどの大王製紙(株)
  • 同製紙メーカーであるユニ・チャーム(株)
  • 農機具の井関農機(株)
  • ボイラーメーカーの三浦工業(株)
  • 尊敬する故坪内寿夫さんに関わり深い(株)新来島どっく 等

他に愛媛県内に事業所を設けている企業として、化学/繊維等で日本トップメーカーである東レ(株)、住友化学(株)、帝人(株)等もあり、工業が盛んな県であることが分かります。

2.特許調査

調査方法

以下の手順で特許マップを作成しました。

  • J-PlatPatの「特許・実用新案検索」において、以下条件で抽出される母集団の書誌情報をcsvで出力した。
    • 出願人/権利者住所=愛媛県
    • 登録日のあるもの(=登録特許)
    • 検索期間:公知日:2018/10/16~2023/10/15(直近5年間)
  • 出力したcsvファイルについて、エクセルを用いてグラフ化=特許マップを作成した。

調査結果

(1)出願人別の登録特許数

直近5年間における愛媛県を本社とする企業の登録特許のランキングマップ(上位10社)を下表に示します。

特に上位5位までの大企業の数が95%以上を占めており、6位以下の出願人の登録特許は20件/5年程度です。

中小企業であっても相当数の発明は創出されていると推察されるので、それらを保護・活用するできるように貢献できる余地はありそうです。

ランキングマップ

(2)出願人別の技術分野分布

次に、縦軸を出願人、横軸を筆頭FI(=特許の技術分類)として、バブルチャートを作成しました。
※それぞれ上位10位以内の項目を出力しました。

このグラフをみると、愛媛県を発祥とする企業は、製紙や農業に端を発していることが良く分かります。

ユニ・チャームと大王製紙とは、製紙や包装等、業態が非常に重複している競合関係といえそうです。

大企業3社+愛媛大学に出願が多い、医学の分野も盛んなようです(地元民ですが、これは意外でした)。

特許の数こそ少ないですが、福助工業はレジ袋生産が日本一ですし、日本キャリア工業は食品加工機器等の技術力が売りであり、それぞれ特定分野に強みを有する中堅企業メーカーです。その特化している状況は、特許の技術分布をみることでよく分かります。

愛媛県に本社をおく企業のみならず、愛媛県全体の企業を母集団として、特に大企業の隙をつけるような分野を見つけてみるもの面白いかもしれません。

(3)注目する2社間の技術比較(おまけ)

上述したようにユニ・チャームと大王製紙の業態が大きく被っていることが気になったので、該2社の技術分野をコンパラマップで対比してみました。

縦軸は筆頭FIサブクラスですが、特にA61F(おむつなどの吸水性パッド等)、B65D(包装品等)で競り合いをしている一方で、以下の技術分野は互いに独自性があるようです。

  • ユニ・チャーム:A01K(畜産関係)やG06Q(情報通信技術)等
  • 大王製紙:D21H(パルプ組成物;紙製品)やA47K(衛生設備/用品)等

※ユニ・チャームは、数こそ少ないですが、大王製紙が深めている分野も手広く分散させていることが見て取れます。

さいごに

今回は、(超)簡単ではありますが、愛媛県の企業に関する特許マップを作成してみました。

地元である愛媛県ですが、調べてみると意外に気付きが多かったです。

特に、以下2点は事実として言えそうです。
特に、②に対する特許からの貢献は出来るのではないか、と感じました。

①中小企業は大企業に比べて特許数では圧倒的な差があること

②その一方で大企業の隙をみた選択と集中による差別化は余地があるし可能である(ありそうな)こと

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA