特許とは

特許の目的

特許とは何でしょうか。まず、特許の目的(なぜ特許が必要なのか?)を説明します。
特許法の第1条には、「この法律は、発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、
もって産業の発達に寄与することを目的とする。」とあります。

この条文の通り、特許法の趣旨(=特許の目的)は(1)発明を保護すること、(2)発明を利用することです。
この2つのポイントに分けて、具体的に特許の目的をみていきましょう。

(1)発明の保護

発明が特許されると、その特許を持つ人は、原則的には以下2つの権利を持ちます。

①実施権(自分が発明をつくったり売ったりできる権利)
②排他権(
他人に発明を実施させない権利)

特許の本質は、特に②排他権にあります。
排他権があることで、その発明を他人にパクらせない、つまりその発明を独り占めできるのです。
これは、ビジネス(商売)をする上で、非常に強力な権利です。
だから、発明をした人たちは、その強力な権利が欲しくて、特許を取ろうとします。

具体的なイメージを持ってもらうために、以下の図のような、ある商品を売る場合に、
その商品に対する特許がある場合とない場合で、どうなるかをそれぞれみてみましょう。

・特許がある場合
特許をもっていると、上述したように、原則その商品をつくったり売ったりすることを独り占めできます。
ここで、その商品を欲しい人(お客様)が100人いるとすれば、その商品を売っている人は自分しかいませんので、
お客様は自分から買うしかありません。

また、自分からしか買えないので、ある程度売り値を高くすること(お客様の足元をみること)ができます。
例えば商品1コ1万円と設定して100人全員に売れたとして、売り上げは1万円×100コ=100万円となります。

・特許がない場合
反対に、特許をもっていない場合を考えてみましょう。
その商品に対する特許をもっていないと、他人(ライバル)はパクりたい放題ですので、
その商品が儲かりそうと感づくと、当然ライバルはその商品をつくって売ろうとします。
この場合、お客様からみると、自分またはライバルどちらからでも買うことができます。

自分とライバルが売る商品の性能があまり変わらないとすれば、お客様は値段が安い方を買います。
安くしないと売れないとなると、当然自分とライバルとの間では価格競争が起こり、売値を下げないといけません。
例えば、ライバルが5千円で売るのであれば、こちらも5千円で売らざるを得ません。
ここで、同じ性能/値段の2つの商品があれば、お客様は二分されますので、自分の商品を買う人は50人になります。
つまり、売り上げは5千円×50コ=25万円となります。特許を持っている場合と比べて1/4です。。

しかも商品を一からつくったのが自分だとすると、その開発費用分ライバルよりも儲けが減ります。
売れる商品を自分がはじめてつくったのに、特許を取っていないと、こんな理不尽なことになり得るのです。

(2)発明の利用

・新しい発明の起点としての利用
技術は累積的に進歩します。

先人たちが成した過去の発明を参考にして、より高度な発明に発展させていく、ということです。
特許はその過去の発明が書かれたものですので、新しい発明の起点となり得ます※。
実際に、特許出願された発明は、過去の発明に何らかの改良を加えたものがほとんどです。

※特許出願は、出願から一定期間経過すると、原則公開されて誰でも見れるようになります。
 これは上記の通り、発明の累積的進歩を狙ったものです。

例えば、現在パソコンやスマートフォン、電気自動車で用いられているリチウムイオン電池は、
先に公開された発明;リチウムイオンをためたり出したりできる正極材と負極材を組み合わせたものです。
たとえ既にあるものの組み合わせであっても、リチウムイオン電池は様々業界に影響を与えたすごい発明であり、
その発明者である吉田彰さんはノーベル化学賞を受賞しています。

・ビジネスにおける情報分析としての利用
特許は、ライバルがやっていることや、お客様が欲しがっていることも書かれています。
ビジネスの基本として、お客様が欲しくて、かつライバルがやっていないものの中で、
自分が得意なものを提供することが価値となる
という考え方があります。
(以下の図で示すように、これを分析することを「3C分析」といいます。)

つまり、特許を読めば、その価値となる領域が分かり得るということであり、
この有用な情報を利用しない手はありません。

(3)保護と利用の両面からの活用

発明の保護と利用の両方の側面を有する特許の活用法として、特許のマネタイズがあります。
特許などの知的財産権は、その名の通り「財産権」ですので、他人に権利の内容を使わせてあげたり、
又は権利自体をあげたりすることができます。

・特許のライセンス
自分自身がその特許の対象である発明を(一部)実施しない場合や、その発明自体の市場を広げる目的がある場合に、
他社に特許を使わせてあげて、その使用料をもらう使い方=ライセンスがあります。

また、お互い実施しようとしている発明に関して、お互いに別の特許を持っていたとします。
その場合、何の取り決めもなく実施してしまうと、相手方の特許を侵害してしまいます。
これだと、せっかく特許を取ったのに、双方何もできません。
このような場合、お互いに特許をライセンスし合って、双方が実施できるようにする使い方もあります。
(これは、クロスライセンスといいます)

・特許の譲渡
明らかに自分自身がその特許の対象である発明を実施する見込みがない場合、それを実施したい人に
特許をあげて、それに対する対価をもらう使い方があります(モノの売買と同じようなイメージです)。

さいごに

以上の通り、特許(法)は発明の保護と利用を図ることを目的しており、産業の発達にはかかせないものです。
特にビジネスにおいては、ライバルよりも速く商品をつくってお客様の求めるものを出すことが求められますが、
近年の技術はものすごいスピードで進化しているので、1社だけではモノつくりが間に合わない時代になっています。
ライバルを回避しつつ、必要に応じて他社と協力して、お客様がバッチリ欲しいものをいち早く出す、ことが必要です。
そのためには、特許などの情報をいかに分析して活用できるか、がビジネスの成否を分けます。
現代のモノつくりにおいて、特許を理解して活用することは、もはや必須なことです。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


雑記

前の記事

ルールの意味
知財関連記

次の記事

発明とは