尊敬する経営者3人
私は読書が好きで、特に偉人伝が大好物です。
これまで読んだ偉人伝の中で、特に感動した偉人(経営者)についてご紹介します。
一般にあまり知られていない方々なのかもしれませんが、だからこそお伝えしたいお三方です。(三人のイラストを並べてみましたが、かなり強烈でした。)
川原俊夫
「ふくや」の創業者で明太子を世に広げた偉人です。
私は福岡県の大学出身なので、大学時代はよく「ふくや」の明太子をお土産にしていました。
その川原さんの生涯として開示されているものの中で、特に印象深い点を下記します。
◆明太子に関して特許は取得せず、望むものには誰にでも製法を教えた。一方で、調味料の配合と粉唐辛子の製法は企業秘密として秘匿した。
これは現代のオープン&クローズ戦略の先駆けです。
望むものには敢えて参入させることで、明太子市場の拡大を図る。
他方で、美味しさの肝となる部分は秘匿することで、自身の優位性は確保する。
非常に優れた戦略ですが、川原さんはそのような戦略、つまり自身の利益というより、単純に「明太子の美味しさをもっと伝えたい」、「自社の従業員を守りたい」その一心の行動だったのかもしれません。
◆高額納税者番付に掲載される一方で、自身の蓄財にはあまり関心がなく寄付を好んだ。
事業を成功させ、自身の利益を顧みず国に還元させるだけにはとどまらず、寄付をして公益に貢献しようとする姿勢には感動しました。
川原さんの思想の根底には、「世のため人のため」があったのだと思います。
小難しい経営戦略論はさておき、事業者に必要なのはこの一念なのかも知れません。
ふくやは、今もなお明太子のシェアNo.1です。
(参考)
川原健 『明太子をつくった男 〜ふくや創業者・川原俊夫の人生と経営〜』、海鳥社、2013年
坪内寿夫
地元愛媛県出身の偉人です。
倒産寸前の企業を数多く再建させた手腕から、「再建王」とも称されています。
そのとんでもない切断力と覚悟は、架空の人物では?と思わせる程です。
◆徹底した合理化:「現状打破」と「少数精鋭」
沈没寸前の企業を再建するために、徹底した合理化を進めた例として、ダボついた官僚主義的な組織を以下のように変革したエピソードがあります。
・部署を67→5に集約、部課長を460→37人まで削減
・週休二日制廃止、定期昇給等の三年停止、賃金カット
労働組合から烈火のごとく反発にあいましたが、それに動じず完遂しました。
(自宅に脅迫文や血の付いた藁人形が投げ込まれたとか。。)
◆「わしは裸になってもかまわんのだよ。雑炊でも食って生きる」
全てを失う覚悟で臨んだ来島船渠の再建は、零細の海運業者向けの画期的なビジネスモデル等が功を奏し、成し遂げられますが、その後の主要取引先の倒産や円高等によって多額の負債を抱えて銀行の管理下に置かれてしまいます。
坪内さんは経営から身を引くことになりますが、この際に3200億円もの企業の借入金に対して、自ら個人保証をつけ、資産のほとんどを失いました。
「経営とは世のため人のためにするものだ」と公言していた坪内さんは、その言葉通り、経営不振に対して私財を投げうってまで責任を取ろうとしました。
強権的なやり方は賛否両論ありますが、その凄まじい生き様は心に残りました。
(参考)
玉手義朗 『あの天才がなぜ転落 伝説の12人に学ぶ「失敗の本質」』、日経BP、2019年
伊庭貞剛
地元愛媛の別子銅山(住友)の中輿の祖といわれる偉人です。
新居浜精錬所から生じた煙害の解決や、植林など環境復元に取り組んだ、ESG経営のパイオニアです。
◆主家や国家のためにならなければ逆らうことが本当の忠
別子銅山において生じていた煙害問題などを解決すべく、別子銅山の支配人として赴任した伊庭さんは、煙害による荒らされた農業環境の悲惨さを目の当たりにして怒りを覚えます。
「(自身が経営する)住友を殺さなければ」という覚悟をもって、また自分自身を危険にさらしながらも、地元民に寄り添って解決に取り組む姿には胸を打たれました。
「(自分が)偉い人かどうかは知らないなぁ。私が決めることではないから」という言葉は、特に印象的でした。
◆「事業の進歩発達に最も害するものは、青年の過失ではなく、老人の跋扈である」
前総理事である広瀬宰平が招いた経営不振(上述した別子銅山の問題等を含む)に引導を渡し自らが総理事に就任して抜本的な改革に取り組んだこと、また自身も58歳の若さで身を引く決断をされたことからも分かるように、伊庭さんは老人の経験に重きを置きすぎることに警鐘を鳴らしつつ、それを実践しました。
その勇気と、潔さがかっこいいです。元幕末の志士ということもあり、武士道精神を感じました。
(参考)
江上剛 『住友を破壊した男』、PHP文芸文庫、2022年
さいごに
3人共に時代や置かれた環境は異なるものの、自身の利益を顧みずに世に尽くそうとしたことは共通しています。
とても真似はできませんが、少しでもそのような人の生き方に近づいていきたいです。