企画・研究段階における特許調査 <市場・技術動向調査>

市場・技術動向調査とは
企画・研究段階においては、自分のやりたいことが、世の中でニーズがあるのか、又は既に他社がやっていないか等を調査する必要があります。
ニーズが無いものを世に出しても何の役にも立ちませんし、当然売れないので損をするだけだからです。
この調査のことを、市場・技術動向調査といいます。
市場データや特許を調査することで、自分が研究しようとする「モノ」が新しいか、またニーズがあるかを確認したり、既に世の中に出ているモノから学んで自分の研究開発に取り込むこともできます。また、自分の敵(競合)が何をしているか把握することで、差別化できる点を見つけることができます。
特許出願から分かること
特許出願には、大きく以下の4つのことが書かれています。
① 技術の情報(どんな発明か)
② 時間の情報(いつ出したか、権利はいつまでか)
③ 発明者や会社の情報(どこのだれが発明しているか)
④ 権利の情報(どんな権利をだれが持っているか)
まとめると、いつ、だれが、どんな発明をして、どんな権利を持っているかが書かれているのですが、これはビジネスにおいて有用な情報です。
つまり、特許を読むことで、ある程度、対象の技術分野の現状が分かるということです。
この特許情報と、特許からは分からない市場データを組合せることで、自分がやろうとしていることが成功するかどうかの感度を知ることができます。
特許文献自体は、図面を除いていは文字のみで構成されていますし、内容が少し読みづらいですが、近年ではパテントマップとして見える化するツールが多数あります(ほぼ商用のものですが)。参考となるリンクを以下に貼っておきます。
・パテントマップの種類
https://mpip.jp/jp/service/patentmap#:~:text=%E7%B5%B1%E8%A8%88%E5%9E%8B%E3%83%91%E3%83%86%E3%83%B3%E3%83%88%E3%83%9E%E3%83%83%E3%83%97%E3%81%AB,%E3%83%9E%E3%83%83%E3%83%97%E3%81%AE%EF%BC%91%EF%BC%91%E7%A8%AE%E9%A1%9E%E3%81%82%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82
・パテントマップ作製ツール
https://patent-i.com/ja/wiki/analysis/
市場・技術動向調査の例
市場・技術動向調査のイメージを知ってもらうために、(非常にざっくりした)例を紹介します。
前提は、以下の通りです。
・自分(自社)は、E県全域でお肉屋さんを営んでおり、おいしいお肉を多くの人に食べてもらいたいという理念がある。
・その理念もあり、加工肉(ハンバーグ)も研究開発を始め、おいしいものができたため実際に売りたい。
・このハンバーグはどこで売ったらいいか、本当に売れるのか、売れるとしたらそのポイントは何かを知りたい。
1.市場データの確認
E県の代表的な都市として、M市、I市、N市があります。
まず、この各都市において、どれくらい加工肉が食べられているかを調査します。
実際の加工肉の消費量は、特許には書かれていませんので、これは別のデータベース等から持ってくる必要があります。データベースの基としては、ウェブや行政機関で開示されている資料で調べたり、調査会社を使って調べる場合もあります。
調査の結果、右のグラフのような各市の消費量が得られ、M市が圧倒的に加工肉の消費量が多いことが分かりました。つまり、M市の人は加工肉が大好きなので(=ニーズがあるので)、まずはM市に注目することとします。

2.特許から技術動向の確認
次に、M市ではどんな加工肉が食べられているかを調べます。
これは上記の市場データで調べることもできますが、開示されている情報では、そこまで細かいものはありませんでした。
ここで、特許情報の活用を考えてみます。
どんな加工肉が食べられているかということは、裏を返せば、どんな加工肉が多く売られているか(研究開発されているか)ということと似ています。
M市には、加工肉の業者としてA,B,Cの3社あり、各社の加工肉の特許出願動向を調べたところ、右のグラフを得ました。自分が特にやろうとしているのはハンバーグであり、M市でハンバーグを研究開発しているのはAのみで、しかも数は少なそうです。つまり、いけそうです。

3.特許と市場情報から具体的な実施態様の確認
最後に、A社のハンバーグの特許出願を具体的にみて、自分のハンバーグが勝てそうかみてみます。
A社のハンバーグは、大きくおろしバーグと、わさびバーグの2種類であり、お肉は牛肉と豚肉のあいびき肉を使っていることが分かりました。
また、実際にA社のお店で調査したところ、値段は安めで、お客様はサラリーマンと思しき中年男性がほとんどでした。
これに対して、自分のハンバーグは、ゼリー(のせ)ハンバーグであり、お肉も牛肉100%です。
比較すると、以下2点で差別化ができ、実際に売れそうな感度が得られました。
・牛肉100% →あいびき肉より高いがおいしい!
・ゼリーのせ →子供を含めた家族向けで売れそう!
また、上記2点の特許出願は誰もしていないため、売る前に出願することにしました。
加えて、Aに対するけん制として、牛肉100%×大根おろしハンバーグや、合いびき肉×ゼリーハンバーグも出願することとしました。

さいごに
上述の通り、特許は、いつ、だれが、どんな発明をして、どんな権利を持っているかが書かれています。
特許を調べることで、どんなニーズがあって、どの技術がまだ未開なのかが分かります。
そのニーズがある未開の技術を自分で持っていれば、高い確率で売り上げを上げることができます。
また、併せてその未開の部分を特許出願することで、競合がその技術に入ってこれないようにすることができます。
つまり、ニーズのある技術を独り占めできるので、大きな利益を得ることができます。
見方によっては、市場・技術動向調査はシミュレーションゲームやパズルゲームに近いかもしれません。
色んな技術を大きな目でみた上で、具体的に研究開発に資するものなので、やりがいがあっておもしろい場合も多いです。
ちなみに、次回説明する侵害予防調査は、その逆で、事業に対する責任が大きく、内容的にも非常に神経を使うのでキツい調査です。。
それでは、また。